さまざまな出会いと経験が、
明日の景色を変えていく。
競輪選手
佐藤 慎太郎
POS製造課
西川 正治/古谷 勇輝
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佐藤 慎太郎 競輪選手
福島県東白川郡塙町出身。
日本競輪学校第78期卒。
日本競輪選手会福島支部所属。
1996年いわき平競輪場で初出走・初勝利。
2019年にはGI決勝2着を2回などで賞金上位。
43歳で挑戦した同年12月の「KEIRINグランプリ」では初勝利を飾る。
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西川 正治 POS製造課
大阪府大阪市出身。1974年に17歳で前身のナショナル自転車工業に入社。
1977年から輸出用スポーツ車の溶接を担当し溶接技能を習得。
1987年からPOSフレームの生産に携わり、1995年からフレームフルオーダーを担当。
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古谷 勇輝 POS製造課
大阪府大阪市出身。高校時代から自転車競技に専念。
2010年入社、電動アシスト自転車の製造にてロウ付けを習得。
2014年からPOSフレームの生産に携わり、2016年からフレームフルオーダーを担当。
その年の競輪王者を決定する最高峰のレース「KEIRINグランプリ※」。
2019年12月に立川競輪場で開催されたこのレースで、佐藤慎太郎選手が史上最年長の優勝を果たし、自身初の賞金王にも輝きました。佐藤選手のそうした活躍に貢献したのが、パナソニックのフルオーダーフレーム。
そこでこのたび、佐藤選手を本社・柏原工場にお招きし、POS製造課の2人のクラフトマンとプロとしてのこだわりや、継承すべきもの、それぞれの世界のこれからについて語り合っていただきました。
※ KEIRINグランプリ:優勝賞金1億円をかけたビッグレース。競輪選手約2,200名の中から9名にのみ出場資格が与えられその年の真の競輪王者を決定する。
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信じてきたことが間違いでなかった!
G1※優勝で確信できたもの。
この世界に入門したとき師匠から「G1優勝は最低限達成すべきこと」といわれました。それはひと握りのトップになるという、入門したての私には、とても想像できないこと。ただ、目の前のひとつひとつを積み重ねれば、いつか辿り着くかもしれない…漠然とそんな希望も芽生えました。競輪は自分が調子よくても勝てないことがある。速ければ勝てるのではなく、仲間との連携も重要な競技です。だから調子がいいのに負けたときこそ、いかに腐らずあきらめず練習を続けられるかが勝負どころ。大怪我をしてスランプに見舞われた際も、そうして自分を鼓舞しました。それだけにG1を初制覇したときの感激はひとしお。信じてきたことが間違いではなかったと確信できました。賞金王になった現在もそれが私の基本です。(佐藤氏 談)
※ G1レース:KEIRINグランプリ(GP)についでグレードの高いレース。
出場できる選手は、厳しい参加条件をクリアした一握りのS級選手のみ。
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自分にとって一番大切なことを
「パナソニック」が叶えてくれる。
パナソニックのフレームは寸法がきっちり出ている。それが自分にとって一番重要な部分であり、そこが満たされているのですごく満足しています。新しいフレームができたとき、いま乗っているフレームのハンドルとサドルを抜いて差すだけで、もうバシッとくる感じ。そのフィット感が素晴らしいですね。最近、選手の間でも話題になっていますが、パナソニック製は他社と比べたら価格が手頃だし、納期が早いので、いろいろなことが試しやすい。フルオーダーだからできるさまざまな可能性を模索する選手がどんどん増えていますよ。(佐藤氏 談)
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クロモリフレーム※が教えてくれる
自転車の真の楽しみ方。
フロー立てて、自分の身体に合わせた1ミリ単位の調整ができるのが魅力ですね。スピードを出すことだけを考えたら、カーボンフレーム※でいいのかもしれない。ただ現段階でのカーボンフレームは、メーカーが作った既製品に自分の身体を合わせる、つまり自転車に乗らされている感があります。自転車の楽しみ方はそうじゃない。自分の身体に合わせたフレームを作って、それを乗りこなす、ここに喜びがあります。そういうことがクロモリならできる。これはPOSのフルオーダーバイクでしか味わえない、究極の境地だといえますね。(佐藤氏 談)
※ クロモリフレーム:クロムモリブデン鋼を使用した自転車フレーム。振動吸収性に優れ、耐久性が高いのが特長。
※ カーボンフレーム:炭素繊維強化プラスチックを使用した自転車フレーム。非常に軽く、造形の自由度が高いのが特長。
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先人が確立した技巧の中に
明日を切り拓くカギがある。
いま若い選手はスピード重視のレースを求める傾向があります。JKA※もシンプルなスピードレースを提供することで、若いお客さんを獲得しようとしている。ただ現状では、お客さんはスピードだけでなく、横の動きや選手同士の駆け引きが展開する、人間味のあるレースを求めています。それは先輩たちが確立した、競輪ならではの醍醐味。だとすれば、まずはお客さんから求められているものを、ちゃんと見せていく必要があるでしょう。先人から受け継いだものをベースに、新しいお客さんをも魅了する、競輪だからできるレース。そうしたものを追求するのが、現役である私たちに課せられた使命だと考えています。(佐藤氏 談)
※ JKA:競輪とオートレースを統括している公益財団法人。
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試すべきは試す、変えるべきは変える。伝統を継承するために、大切なのは柔軟性。
パイプとラグを接合する「ロウ付け※」を行う際、一般には温度を一定に保てるプロパンを用います。ただし温度調節が難しく、熱が入りすぎて強度が損なわれる場合があります。一方、弊社ではガスバーナーを使った方法にて実施。これは先人らが行ってきた方法で、非常に細やかな調整が必要ですが、土台の温度を上げず集中的に溶接でき、強度を高められます。パナソニックにはこうした技術の伝承を行う上で、競輪界に似た師弟関係が機能しています。ただ弟子も受け身ではなく(笑)、言いたいことは何でも言う。それは互いを尊重する、信頼関係があるからできることです。実際、要望を受けたとき「できない」では通用しません。だから試したいことはどんどん試せばいい。伝統の継承は、変えるべきは変えるという柔軟性があってこそ成り立つのだと思っています。(西川 談)
※ ロウ付け:パイプとラグの間にロウを流し込んで固定する溶接方法。
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極限まで軽く、強く。
理想を追求できるのはフルオーダーフレームだからこそ。
踏み出しが軽くて、力を入れなくても進んでいく…そんなフレームが理想です。競輪選手は見た目にもこだわるので、どうしても注文が細かくなる。でも、求めているのはやはり軽さ。目で見て軽そうなものは心理面に影響するし、乗っているときの反応もいい。体重のある選手はそこまで気にしないかもしれませんが、私は体重が軽い方なので、脚力をダッシュのときのために温存しておきたい。現在のフレームはそれができるので気に入っています。今後さらなる軽さ、そして強さを追求する上で、POSのフルオーダーフレームは実に頼りになる存在です。(佐藤氏 談)
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「理想のフレームを届ける」、
その思いがチームの力を強くする。
競輪選手のみなさまは仕事の道具として自転車を使われていて、それぞれに強いこだわりをお持ちなため、「人とは違う自分だけのフレームを」というご要望をいただきます。そうしたご要望に可能な限り応えて、その選手ならではの個性を引き出す「理想のフレーム」の製作を探求しています。例えば、パイプ同士を結合する継手である「ラグ」を磨いて美しく仕上げることは、見た目だけでなく軽さにもつながります。こうした取り組みは、佐藤さんをはじめとしたユーザーさまからのお声が出発点。今後はニーズを掘り下げるために、競輪場に足を運んで選手の方と活発に対話したいと考えています。私たちが作ったバイクが競輪界のトップ選手に使っていただけている、それは私たちの誇りです。今後もオーダーいただいたお客さまに「理想のフレームを届けたい」という共通の思いでPOS製造チームが一丸となり、お客さまのご要望にいっそう応えていきます。(古谷 談)
佐藤選手仕様の「限りなく軽いフレーム」が完成!
フレームの軽さを追求するため、ラグを研磨し、前フォークを加工。ヘッドの長さを限界まで短くし、バテットの長さを調整することで、強度を確保しました。
さらに、フォークのラグ窓を塗装し個性を強調したほか、スローピングすることで前三角の剛性を向上。
MAXフォークのツメを鍛造エンドにすることでしなやかさを実現し、フレーム全体のバランスが取れた「限りなく軽いフレーム」に仕上げました。
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